別の項目でお話しした通り、遺言書が発見された場合には、それが公正証書遺言や法務局で保管されている自筆証書遺言であるときを除き、家庭裁判所に提出して検認手続を経なければなりません。
 それでは、検認手続を経ていない遺言書は効力がないのでしょうか。
 検認手続は、「遺言書の原状を保全する手続」と解されています。
 公証役場や法務局で保管されていなかった遺言書については、発見後に偽造されたり変造されたりする危険性があるため、発見された状態を保存しておく必要があり、そのため、家庭裁判所が関与する必要があるとされています。
 つまり、検認は、発見された原状を保全する手続にすぎず、検認と遺言の効力は全く無関係であり、家庭裁判所の検認を経たとしても、本来無効な遺言書が有効となるわけでもありませんし、また逆に、有効な遺言書が検認を経ていないことを理由に効力を生じないとされるわけでもありません。
 遺言書の効力はあくまで、遺言能力があったかどうかと、方式に違背していないかどうかによって決せられます。
 詳しくはそれぞれ別の項目でお話しします。

この記事を書いた人

日下 貴弘

略歴
東京都出身。
早稲田実業高等部(商業科)卒業、早稲田大学法学部卒業、中央大学法学部法務研究科修了。
大学卒業後、大手都市銀行に就職。その後、都内弁護士事務所勤務を経て、 2020年、グリーンクローバー法律会計事務所を設立。
代表弁護士・代表税理士。
東京弁護士会所属(税務特別委員会、高齢者・障害者の権利に関する特別委員会)。
東京税理士会本郷支部所属。
日本税務会計学会法律部門学会員。